世界から猫が消えたなら

永井聡監督。主演、佐藤健

レビューの星もそんなに良くなかったので、そこまで期待はせずに鑑賞。

(「2016年最も泣ける」とか胡散臭え!!どーせ死をテーマにしたお涙頂戴だろ?くっだらねえ!!とちょっと思ってたのはここだけの話。)

そんなひねくれた考えで見ていたため、猫を消そうと宣告されるまでは、実はそこまで印象に残っていない。

CM出身の監督だから1つ1つの画は丁寧だなあと思ったくらい。

しかし、そこは名脚本家、岡田惠和。ここから一気に引き込まれる。

それまではいわゆる死をテーマにした作品だろうなという印象だったのが、一転、人の存在という、逆に生をテーマとした作品のように感じられた。

人1人の存在が消えるということは、世界から単に人を1人なくすということではない。それは、人という存在は、周囲の人からの思いで形作られているもので、人が1人いなくなるということは、その人が思っていた人の存在をゆがめると同時に、その人を思いやっていた人の存在をも別物にしてしまうから。

社会に生きる人間は、誰1人として1人で存在しているわけではない、というような、強烈な生を思い知らされた。

この生は、監督が演出した1つ1つの画との相互作用でますます強烈なものとなっていく。

「2016年最も泣ける」というコピーはちょっと勿体ないなあと思うが、トップクリエイターが集結して作られた作品という紹介は本当。

原作ファンからの評判が特によろしくないようだが、映画としては、主人公を中心に、十分人を描き切れていた作品ではないでしょうか。