リンカーン
スティーブン・スピルバーグ監督。主演、ダニエル・デイ=ルイス。
予告編のダニエル・デイ=ルイスがカッコ良くて、何年も前からひそかに気になっていたのだが、ようやく鑑賞できた。
タイトル通り、リンカーンを題材とした作品なので、南北戦争を中心とした時代の中で、アメリカ史に残る大統領であるリンカーンの英雄的な側面を描いているのではないかと、観る前は思っていたのだが、その予想は大きく裏切られた。
戦争のシーンは皆無に等しく、シーンのほとんどはホワイトハウスと議会で展開されていく。
そこで描かれているのは、憲法の改正案を下院で通すための票獲得に奔走する姿。めちゃくちゃ地味。
さらに、冒頭でスピルバーグが簡単な時代背景を説明してくれるのだが、この時代についてある程度の知識がないとスムーズに観るのは難しいかもしれない。アメリカ人が忠臣蔵を観た感覚と一緒だろうか。私も、そもそもの予備知識に乏しいため、疑問に思ったところを調べながら観た。
これだけだと、無茶苦茶地味で、しかも2時間30分の長尺な、つまらない映画としか思えない。しかし、実際は、一瞬たりとも目を離せないほど、迫力のある作品だった。
この迫力を生み出していたのは、やはり、俳優たちの演技だろう。
特に私が好きなのは、トミー・リー・ジョーンズ演じるスティーブンスの議会でのシーンだ。
スティーブンスは白人と黒人が等しく扱われることを強く望んでいた。しかし、そのシーンでは、その信念を否定する発言をする。
それは、憲法の改正を実現を願うからこその「上辺の」発言であり、逆にその信念がいかに強いものであるかを表現するシーンだった。
そして、リンカーンは、大統領として、父として、夫して、あらゆる苦難を抱える、皆の思うリンカーンとは違った姿でした。派手ではないながらも、感情が揺れ動くさまを表現しきったダニエル・デイ=ルイスは流石としか言いようがなく、彼以上にリンカーンをうまく演じられる俳優はもういないんじゃないだろうか。
知識が足りなくても、楽しんで観られたが、次観る機会があったらちゃんと勉強してから観よう。。。