英国王のスピーチ
なんかタダで観れたんでついつい観ちゃった。観終わったらもう明け方。
スピーチなんてタイトルについてるから、最後に大演説で感動的な話になるのではないか、というのが、観る前の印象。
でも、観た後の感想としては、大号泣というよりも、心がほっこりするという感じ。すごく大雑把に言うと。
というのも、メインで登場する人物がとにかくほぼ全員優しい。
政治が絡んでいながら、ここまで人が優しいのも珍しい。
王としての自らの資質に悩み、家では1人のよき父親である、ジョージ6世。
そんな王の苦しみを分かち合い、見守る王妃はまさに良妻。
演じたのはヘレナ・ボナム=カーター。
ベラトリックス・レストレンジやテナルディエ夫人と、とても同一人物とは思えない。
ちなみに、チャーチルもピーター・ペティグリューでさらにビックリ。
そして、ジェフリー・ラッシュ演じる、ライオネル・ローグ。
皇太子に向かってバーティと愛称で呼びかけたり、大聖堂のイスに座っちゃったりと、大胆な行動が目立ちながらも、その行動すべてが、吃音の克服のためという優しさ。
下手したら王への不敬で自分の立場も危ないんじゃないかって行動もいくつかあった。
でも、思いやるからこそ、出過ぎた行動をしてしまう。
この思いやりが身分を超えた友情を生んだんだろうなあ。
個人的には、最後まで王がライオネルと呼ばなかったのがよかった。
もし、最後のシーンでライオネルとお約束通り呼んでしまったら、狙いすぎてちょっと安っぽくなったかも。
そこで、最後に王妃にライオネルと呼ばせたのは絶妙。この王妃がこの作品のバランサーだった気が。
他の人のレビューには、シナリオに不十分な点が多く、イマイチだという意見もあったが、そこまで詰め込んだら長くなり過ぎちゃうから、優しさというものに焦点を置いた作品としては、このくらいの充実度でよかったのだろう。この作品を観るのは2回目だったのだが、十分楽しめた。
泣きすぎず、興奮しすぎず、誰かとゆったり観るのにはちょうど良い作品だろうなあ。
ビューティフル・マインド
ナッシュ均衡で有名な、ジョン・ナッシュの半生を描いた作品。
プリンストン大学院の学生であるジョンは、天才的な頭脳を持ちながらも、同時にとんでもない変わり者としても知られ、授業に出席せずに、人との関わりもなく、研究に没頭する。
やがてジョンはそれまでの経済学をひっくり返すほどの理論を発表し、志望していたウィーラ―研究所に就職。
その頭脳を見込まれ、政府の人物と名乗るパーチャーという男から、ソ連の暗号解読を依頼される。
超国家機密クラスの依頼にかかるプレッシャーは、次第に彼の精神を蝕んでいく。。。
といったお話。
だが、これはあくまで序盤。
これだけだと、サスペンスのような、緊迫感のある映画のように感じるが、中盤、そして終盤と、まるで違った雰囲気となってくる。
最後なんかもう完全にヒューマンドラマ。
出来るだけ、中盤のネタバレを避けて書きたいのだが、そうすると、終盤についてもほとんど書くことが出来ないので、内容についてはこの辺で。
少しだけ言っておくと、あれだけ理論を強調していた序盤からは考えられないくらいに、「見えないもの」に頼ることとなる急展開が待っているということ。
かなり抽象的だけど。
内容についてはこのくらいだとしても、1つ言っておかなければならないことがある。
それは
ラッセル・クロウ演技上手すぎるでしょ。。。
レ・ミゼラブルのジャベールがそこまでフィットしていなかったイメージが強いので、ここまでとは知りませんでした。今度グラディエーターも観なきゃ。
統合失調症とわかってからの狂気、滑稽さ、などは引き込まれるものがある。
めっちゃ怖かった。
さらに、1人で学生から老人まで演じてしまったんだから、もう、非の打ちどころがない。
人は年を取ったら老けるんです。
見た目だって当然、若いころのようにはいかないんですよ?
(誰に言ってるんだか知らんけど。)
奥さん役のジェニファー・コネリーもお見事。
この2人の演技を観るためだけに、この映画を観てもいいというくらい。
数学とか難しいのはちょっと。。。という人にもぜひ観てもらいたい、ヒューマンドラマとして良い作品でした。
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
スティーブン・ダルドリー監督。主演、トム・ハンクス。
9.11をテーマにした同名小説が原作。
まだ小学生低学年だったけど、この事件は衝撃的だったなあ。。。
記憶にある衝撃的な事件で最も古いものがこれになるんだと思う。
ここから簡単なあらすじ。
舞台は9.11から1年後。
少年オスカーは、父を事件で亡くし、母と2人で暮らす。
アスペルガー症候群を抱えるオスカーにとって、父は数少ない理解者の1人だった。
そんな父の突然の死。
家族がそれを受け入れられないまま、1年。
それまで1年間、誰も入ることのなかった父のクローゼットで、オスカーは鍵を見つける。
オスカーはこの鍵に合う鍵穴を探すことを決意する。
どんどん遠くへ行ってしまう自分の中の父に、再び会うために。
といった感じ。
まず気になったのはこのタイトル。
意訳かと思ったら、そうでもなかったからビックリ。
では、一体何がうるさくて、何が近いのか、これを意識しながら観ることにした。
で、一応自分の中で答えは出たのだけど、ここで語ってもこのことに関して見返すことはたぶんなさそうだから、簡潔に書く。
うるさいのは、オスカーにとっての世界。
調べてみたら、アスペルガー症候群の人には、僕らにとってはなんでもない雑音でも、いちいちうるさく聞こえてしまうとか。
実際、オスカーが耳を塞ぐシーンはいくつかあった。
そして、近いのは周囲からの愛。
いなくなった父からの愛は、実は依然として近くにあって、ずっと遠くにあると思っていた母の愛も実はこんなところに。。。
この遠近感ってのがこの映画のキモではないだろうか。
観た感想としては、ただただ感動した。
前半は、アスペルガー症候群の苦しさが顕著に表れていて、うるさいし、人との距離感はめちゃくちゃだしといった感じで、正直退屈に感じた場面もなかったわけではない。
しかし、後半にかけてのオスカーの成長は観ていて心温まるものがあるし、それまであれ?と思った点も回収してくれるので、総合的には良かった。
でもまあ、前半はちょっと我慢して観てねと、人に勧める際には伝えるだろうな。。。
オデッセイ
インターステラ―に続き宇宙モノ。
火星に取り残された主人公が、地球からの助けが来るまで様々な策を講じて生き残るというお話。
感想を一言で言うと。。。微妙だった。。。
いや、つまらなかったわけではないですよ?
ラストシーンはすごく良かったと思います。
ただ、インターステラ―がそれはもう素晴らしかったというのと、宇宙大好きな僕としては、無茶苦茶期待して観に行ったわけで、期待しすぎた分、面白みがそこまで感じられなかったのです。
つまりは、物足りなかったのです。
例えば、人物の描写。
火星に1人取り残された主人公、上層部からのプレッシャーを受ける管制、仕事を急かされる現場、そして、仲間を1人置き去りにしてきてしまった他のクルー達。
そこには計り知れないほどのストレスがかかってるはずです。
これらのストレスからくる葛藤、衝突というものをもう少し丁寧に描いてくれれば、ラストのシーンでより感動できたのではないかと思うのです。
だから、ミッションの過程を歌を挿入しながらダイジェストのように流すシーンは、僕には少し雑なように感じてしまいました。
あえて、いい表現をするとしたら、完璧な超人ばかりで、共感しにくかったのです。
いや、諦めないことがテーマならこれでよかったのだろうか。。。
あと、宇宙ということで、映像にもかなり期待したのですが。。。
火星があんな感じということはわかっていながらも、やはり物足りない。
最初の嵐が襲うシーンがよかっただけに、これからどんなシーンがあるのだろうかと期待しっぱなしの2時間でしたが、あのシーンがピークだったようです。
3Dで観たらまた違ったのでしょうか。
これに関しては、期待しすぎという感じは否めませんが。
このように、僕にとってはかなり消化不良な作品となってしまいました。
ミリオンダラー・ベイビー
クリント・イーストウッド監督、主演。
クリント・イーストウッド演じるトレーナー、フランキーが経営するジムに、女性ボクサーのマギーが入門を申し出る。
その女性が31歳と高齢であること、そもそも女性は面倒見ないと決めているフランキーはその申し出を一蹴するものの、食い下がるマギーに根負け。
やがて2人の間には親子に似た絆が生まれていく。
って話。超大雑把に書くと。
これだけだと、よくあるサクセスストーリーじゃん。。。ほぼロッキーじゃん。。。となるのだが、中盤まではそんな感じ。ほのぼの。
かと思いきや、ある事件から一変して、重苦しい雰囲気に。
人ならばそれぞれが持っている倫理観というものに激しく問いかけてくる終盤だった。
こんな映画だから、当時は賛否両論別れたんだろうなあ。。。
グラン・トリノと似たような作品だったのかなと思うんだけど、グラン・トリノが男としてのかっこよさに焦点を当てた作品だったのに対し、ミリオンダラー・ベイビーは人の葛藤、答えなどあるはずのない、悲痛な悩みみたいなものに焦点を当てた作品だったのではないだろうか。
個人的には、グラン・トリノの方が好きかなあ。
少なくとも、もう1回観たいと思える作品はグラン・トリノの方。
ミリオンダラー・ベイビーはもうしばらくは観なくていいかなあ。。。
いい作品なのは間違いないけれども、とにかく重い。どんよりとした気分になってしまう。
あ、モーガン・フリーマンは相変わらずよかったですよ。
インターステラー
クリストファー・ノーラン監督。主演、マシュー・マコノヒー。
この監督の作品は面白いんだけど、とにかく疲れるので、覚悟して観賞。
中盤まではゴリゴリのSF。
専門用語とかも結構出てきて、想定外の頭の使い方を強いられる。
あと、映像がめっちゃきれい。ブルーレイで借りてきてよかった。
ワームホールってあんな形してるのだろうか。。。
宇宙だったり、星だったり、農地だったり、出てくる空間がとにかくすべて広くて壮大。
どれだけ実写で、どれだけCGなのか。。。
こんなに素晴らしい映像なら、映画館で観ておけばよかったと後悔。
終盤はどう展開していくのだろうか。。。壮大なSFのまま終わるのだろうか。。。
そんなわけはない。
終盤は急に人間ドラマにシフトチェンジ。
さらに、それまでの伏線も一気に回収し、結局は予想通りの疲れを味わうことに。
まさか、ポルターガイストに感動する日が来るとは。
どうやら3時間もの長尺だったらしいけど、長いとは一切感じなかった。
こんだけ疲れるのがわかってて、実際どっぷりと疲れてでも、めっちゃ面白いということのできる作品。
1人で観ても、みんなで観ても楽しめる作品。
1本映画をおすすめするならしばらくはこの作品になるのかなあ。
ブリッジ・オブ・スパイ
スティーブン・スピルバーグ監督。主演、トム・ハンクス。
舞台は冷戦真っ只中のアメリカと東ドイツ。
実在の人物を題材にした作品。
最近そんな映画ばっか観てる気がする。。。
簡単なストーリーとしては、トム・ハンクス演じる弁護士ドノヴァンが、ソ連のスパイを弁護することとなる。
世間は死刑を求める中、死刑の回避に成功したのもつかの間、アメリカのスパイがソ連に捕まる事態となり、スパイ同士の交換という任務が極秘裏に課され、情勢が不安定な東ドイツへと飛ぶ。
その最中、アメリカ人学生が無実の罪で東ドイツに捕まってしまい、その学生の解放も出来ないかと画策する。
米ソの利害に、東ドイツのメンツが交錯する中、ドノヴァンはどのように交渉していくのか。。。
というのが簡単なあらすじ。
観たところ、同じく実際の出来事を題材にした作品である「アルゴ」と少し似ているのかなという感じ。
ただ、ブリッジ・オブ・スパイの方が全体を通して雰囲気が重厚で、その分純粋なスリルはアルゴの方があった気がする。
だからと言って、この作品の方がつまらなかったということでは決してなく、表立ってスリリングなアルゴに対し、国家間の対立の中で、人道的な立場をとるドノヴァンがどう交渉していくのかといった裏のスリルとでも言うのだろうか、そんなじわじわとした迫力のある作品だったのではないだろうか。
それだけ重厚でありながら、観賞後に心地よい疲労感で留まったのは、ところどころに細かいユーモアをちりばめたセリフの巧みさに加え、それに細かい描写を含めながら演じきった俳優陣が見事だったからであろう。
そんな映画だったからか、1人で観に来ている人が多く、1人映画でも全然気にならなかったなあ笑。。。